返済が不要でおトクである一方で狭き門である「給付型」奨学金。しかし、医療・福祉系を目指す人にだけ特別に用意された奨学金制度があることをご存じだろうか。ここでは「貸与型」「給付型」とは違うもうひとつの「特殊型」奨学金を紹介します。
卒業後の進路状況で「給付型」奨学金に
基本的には「貸与型」だが,卒業後に奨学金を運営する組織や団体などが定める諸条件をクリアすれば「給付型」になる,つまり受け取った奨学金の返還を免除されるというもの。例えばよくあるのが、卒業後に指定の大学病院や自治体が運営する医療機関で○年以上勤務する、といったものである。こういった「特殊タイプ」は,医師や看護師,社会福祉士などを目指す人が対象となっている。そのため,これらの資格を取得できる大学を受ける人には,利用価値の高いおトクな制度だ。特に,看護師を目指す人向けの奨学金は,地方自治体のほかに,規模の大きい病院なども独自に実施しており,利用できる可能性は比較的高い。
「特殊型」のデメリットに注意
返済不要になるというメリットばかりに目を奪われてはいけない。デメリットも十分に考慮し、活用するかどうか判断したいところです。
勤務地が限定される
デメリットの1つめとしては、勤務地が限定されるということ。自治体が運営する奨学金であればその自治体が運営する公立の病院に、大学が運営する奨学金であれば当然、その大学系列の医療機関となる。
退職した場合、一括返済を要求されることも
国家試験に合格し、指定の医療機関に就職できたとしても指定勤務期間を満たす前に退職してしまった場合は一括返済を迫られる場合もあります。仮に私大・医学部6年分の奨学金ともなると数百万から1,000万円を超える金額になります。医療従事者として勤務を続ける覚悟が問われる制度だといえます。
自分が利用可能な奨学金を調べよう
現在,日本の奨学金制度で最大のものは,日本学生支援機構が運営する国の奨学金制度で,利用者は約 132 万人(大学院生,短大生,専門学校生なども含む。2013 年実績)もいる。他の奨学金制度の利用者数は,多いところでも数百人~数千人程度なので,現状では最も身近で利用しやすい制度と言えるだろう。
地方自治体(都道府県や市区町村)や,民間の企業などが資金を出して設立した育英団体が実施する奨学金制度も数多くある。前者は貸与型が大多数で,後者は給付型が多いかわり,応募条件が厳しい。しかも,いずれも募集人員が少ない。
ここで見逃せないのが,各大学・短大などが独自に運営している奨学金制度だ。多くの学校が,貸与型と給付型を併用して実施し,その数は増加傾向にある。特に,私立大はほとんどが実施していると言ってもよく,しかも給付型が増えつつある。中でも,入試を受ける前に給付が内定するタイプ(入試前予約型)が注目を集めている。
この他にも,さまざまな奨学金制度がある。例えば,大手新聞社では,朝・夕刊を配達しながら各大学に通うことができる「新聞奨学生」を募集している。仕事はとてもハードだが,きちんと働けば,奨学金以外に,給料なども支給される。保護者が事故や災害に遭ったことが原因で,家計が困窮している家庭の子どもを対象とした「あしなが育英会」や,保護者が交通事故で死亡したり後遺症のため働けなくなったりした家庭の子どもが対象の「交通遺児育英会」などの奨学金制度もある。また,母子家庭など,さまざまな理由で生活が困窮している家庭の子どもに対する奨学金制度も,地方自治体などで実施されている。
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